ステパノの殉教

父よ。この罪を彼らに負わせないでください。(使徒7章60節)

一、評判の良い人(使徒 6章)
 信者の数が増え続けた初代教会で、使徒たち以外に新たな責任者を選びました。きっかけは、言葉の行き違いによって生まれたトラブルです。教会員の中には、使徒たちのようにユダヤ本来のヘブル語を話す人々と、当時の国際語であったギリシャ語を話す人々がいましたが、たぶんそのことから、貧しい人々への食料の配給に不公平が起こりました (1節)。しかし、大勢の教会員の不満を解決するために使徒たちが気を遣ってばかりいれば、キリストの福音を伝えるという、いちばん肝心な務めが、充分にできなくなります
(2節)。それで教会員の日常生活などに気を配る責任者を選ぶことを、使徒たちが提案しました。それに全員が賛成したので、早速、御霊と知恵に満ちた評判の良い七人を選び、任命しました (3ー6節)。その結果、使徒たちも充分に祈りとみことばを伝える奉仕ができるようになり、キリストの福音は、ますます広まっていったのです (7節)。
さて、7人のトップに選ばれたステパノは、恵みと力に満ちた人で、与えられた役割を忠実に行ったばかりではなく、伝道にも励み、多くの不思議な業としるしを行いました
(8節)。けれど、世の中には、どんなに立派な人のことも素直に受け入れず、かえって陥れようとする人々がいます。9節の『リベルテんの会堂に属する人々』もそういう人々でした。彼らは、ステパノをやり込める目的で議論をしかけました。しかし、どんなに向かっていっても、御霊の導きによって語るステパノに対抗すことができません。それで悔しさのあまり、群衆やユダヤ教の指導者たちを唆して偽りの証言をさせ (11、13、14節)
彼を議会に訴えたのです。

二、ステパノの殉教(使徒 7章)
しかし、ステパノが逮捕されて、ユダヤの最高議会に引き出されたことは、キリストを信じない議員たちに、真理を伝えるよいチャンスです。ステパノは、訴えの内容が事実かどうか質問する大祭司の前で、先祖のアブラハムの時代にさかのぼって、神のご計画と先祖たちの犯した罪を語り始めました(2ー53節)。そして、御心に背いて、キリストを十字架につけ、今もなお聖霊に逆らい、悔い改めようとしないユダヤ人の罪を厳しく追求したのです (51ー53節)。説教を聞いていた人々は、話が自分たちの罪に及ぶと、悔い改めるどころか、かえって激しく憤りました。そしてステパノを町外れに追い出して、石で打ち殺してしまいました。しかし、聖霊の導きに従ったステパノは、彼を死に追い込んでいる人々の救いさえも祈らずにはいられないような(60節)、愛の心を与えられていたのです。そして彼は、天におられるイエス・キリストを仰ぎ見ながら、安らかに永遠の御国へと召されました (55、56、59節)。
 私たちも、聖霊に満たされ、聖霊の導きに従って歩み続けましょう。心から人を愛し、自分の罪が赦されたように人をゆるし、輝いた人生を送ることができるように祈りましょう。

* 主題=聖霊に従う者は、キリストと同じように敵をも赦す者となる。

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